2019年 9月2日(月)
お月見
9月13日は十五夜です。
秋になって、空の水蒸気が段々収まり、冴え渡った紫紺の空にまぁるい明るいお月様が雲の波間を縫って静かに夜空を旅して行きます。
現代はお月見をきちんと祝うご家庭は段々減っているようですが、私の家は、
十五夜と十三夜を欠かさずお祭りしていました。
その日は朝からおだんご作りで、米粉の蒸しあがる匂いに子供心にわくわくしていました。
米粉をいったん蒸したあと、すり鉢の中で搗いたものを、母と一緒に大きなだんごにまるめ、三方に半紙を敷いて、お山のように三段に積み上げます。
家族で近くの野原にすすきを取りに行き、夕暮れに秋の花々と一緒に窓辺に供えます。
夕食の後、みなで窓辺に座って、お飾りの前で月を愛でます。
お月様は「のんのんさん」と言って、神秘的な力を持った存在だと教えられていました。
三方や半紙を使った飾り方は、鏡餅も同じですが、それだけでも凛とした美しい佇まいに
子どもながらも気持ちが静まり、何か畏怖の念のようなものに包まれます。
何もかも活気を帯びて広がっていたにぎやかな夏の後、このような静けさのある美しいお祭りがあるということは、日本民族の美意識の高さを示しているように思います。
もともと、すべての行事は神事でした。子どもにとっても、一年のそれぞれの行事は、
心と体に深く染み込んで行く、本当に大切な経験です。
現代では、そのような神事としての重さは段々消えて、表面的なモチーフや楽しさが前面に出てきています。また、このごろでは海外のお祭りも入ってきて、なかなかそれぞれのお祭りをじっくり祝うのは大変だと思いますが、子どもの心深く、自然への畏敬と結びつくお月見のようなお祭りは、是非ご家庭でも大事にしていただきたいなと思います。
お忙しい毎日ではあると思いますが、子どもの頃にお母さんと一緒に体験した特別な時間は、お子様にとって、またお母様ご自身にとっても、生涯かけがえのない幸せなプレゼントとなることでしょう。
どうぞお忙しい日々の中に、お子様との特別な時間を作ってみていただければと思います。
【手仕事】 簡単に作れる紐2種
ひるまは牛がそこにいて、
青草たべていたところ。
夜ふけて、
月のひかりがあるいてる。
月のひかりのさわるとき、
草はすっすとまたのびる。
あしたもごちそうしてやろと。
ひるま子どもがそこにいて、
お花をつんでいたところ。
夜ふけて、
天使がひとりあるいてる。
天使の足のふむところ、
かわりの花がまたひらく、
あしたも子どもに見せようと。
金子みすず
「草原の夜」
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