織りについて
先回から、親子クラスの手仕事として、織りをしていただいていますので、少し織りについて、考えてみたいと思います。
そらの卒園児たちは、数ヶ月をかけて、織りにとりくみます。
毎年、子どもたちは、いつ織りが始まるのかを、とても楽しみにしています。
年少さんのときから、年長さんが、上手に織って、作品を仕上げて卒園していくのを、
憧れを持って眺めており、「大きい組さんになったら」と、ずっと待ってきました。
でも、始めてみると、それはなかなか根気のいる仕事だということが、すぐにわかります。
遊びたいのを我慢して、毎日毎日数本ずつ進めて行きます。
すると、努力したことが、だんだん美しい作品として見えてきます。
先が長いと見えたことも、少しずつ、少しずつ歩みを止めずに進めることで、
最後には美しい作品が仕上がるという体験は、これからいよいよ学習を始める子どもたちに、「学び」への基本的態度を予感させてくれるものと思います。
大人にとっては、縦糸と横糸の関係を認識して間違いなく作業していくことは、
大して難しくありませんが、幼児さんにとっては、とても骨の折れることです。
「上、下、上、下・・」の順が、次の段では「下、上、下、上・・・」と、
逆に組み合わさっていかないと、織れていけません。
何度やっても失敗して、泣きそうになる子も・・・。
でも、じきに、この「上、下」のリズムが体に入ってくると、するすると織れて行きます。
でも、今度は油断して、手元がいい加減になり、うっかり間違えてしまいます。
織物や編み物は、単純な作業ですが、ぼんやりしていると、間違えてしまうので、
適度な集中を保たなくてはなりません。
縦糸と横糸が均衡を保って美しく織れていくこと。
このこと自体が、子どもの心の中にも、一定の安定感や均衡を生み出すような気がします。
織物は、まるで、バロック時代の多声音楽のように、多くの旋律が、お互いに融合して統一した美しい響きを作り上げていくのに似た印象を受けます。
このようなリズムを子どもが体ごと体験できることには、とても意味があるように感じます。
ところで、子どもが3年生くらいになると、世界と自分との距離を感じ、不安になる時代がやってきます。
「9歳の危機」とシュタイナー教育では呼んでいますが、そんな不安定になった子どもたちに、いろいろな方向から力付けをしてあげるその一つに、「フォルメン線描」という教材があります。
そのフォルメン線描を、シュタイナー学校ではずっと練習していくのですが、「9歳の危機」のころの線描に、まるで織物のように、線を「上、下、上、下・・・」と組み合わせていく練習があります。
その練習は、不安定になっている、子どもの心の内と、世界という自分の外の世界とのつながりを、改めてバランスよくつなげるお手伝いができる方法として、シュタイナー教育で提示されています。よかったら、一度やってみてください。
確かに心が安定して、落ち着く感じがします。
織りをすることは、そんな自分の内側と世界とをつなげることにもつながっていくとすると、ただ楽しく、美しく、「作品を作る」という次元を超えて、人間の心の成長や人生にも関連してきそうです。
**朝のおあつまりに歌っているお祈りの歌より**
お守りください
やさしい天使
いつもいつも 夜も昼も
あなたは私のそばにいる Hmm・・
お守りください
やさしい天使
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